ある世界への入り口を買いました



hiromi ono「角茄子」

5/12(日)に東京ビックサイトで開催されたデザインフェスタ(*1)に足を運んできました。旦那さんのご友人が油絵を出展するというお知らせを受けたためです。デザインフェスタとは、絵画以外にもイラスト、工芸、服、パフォーマンスあり、いわば大人の文化祭といいましょうか。コミケ(同人誌即売会)のオールジャンル版のようなもので、その場で作品を買うことができます。全てが鑑賞や実用に堪えるレベルかと言うと難しいものもありますが、手先の器用さという意味では皆かなりの腕前で舌を巻くものがあります。

このご友人の絵の実力については旦那さんは一目置いています。その昔お宅にお邪魔したときに手押しポンプの井戸の絵を見せてもらったそうです。なんでも高校時代に描いて賞を取ったものなんだとか。全体的に暗いトーンなのですが、ポンプ部分の丸みが圧倒的な存在感、旦那さんが感じたことのない現実感として迫ってきたといいます。ただの手押しポンプの井戸でもご友人にはこんな風に見えるのだ(もちろん絵として表現する技術があってのことですがね)、目で見える世界というものを考え直すきっかけになったんですって。

会場に着いたら真っ先にそのご友人のブースに向かいました。そうしたら彼女が書き溜めてきた油絵がたくさん並べられていました(*2)。たくさん並ぶとわかることの一つにその人の世界の切り口があります。何に関心を抱いているか。何を注意してみているか。それもまたその人にとっての世界、ある世界の見え方です。それが自分と似ていれば安心感や共感といったものになりますし、自分と似ていなければ刺激や不快感となります。でもそんなに簡単に所感を切り分けることはできません。実際に絵を目の前にしていろいろな感情がわきあがってきます。そのご友人の絵も例外ではありません。


「イタリアって、空が突き抜けるように青いはずだよね。
だけどどうして空の色が淡い紫なの?」

「深い森の緑はステキだけれど、どうしてカラスを描いたの?
ちょっと怖いかも。」

「春待ちの桜の絵なんだね。春の予感があるところがいい。
満開の桜をかかないところがあなたらしい。」


作品を前に画家とそれについておしゃべりするなんてまるでギャラリー、これこそデザインフェスタの醍醐味でもあります。ご友人は丁寧に旦那さんの疑問や所感に返答してくれました。

その中で旦那さんが気にいって購入に至ったのが、角茄子(ツノナス)の絵です[記事トップの絵]。角茄子は狐茄子、フォックスフェイスとも呼ばれます(*3)。私が狐だから旦那さんはこれを買ってくれたのかしら…とちょっと期待してみましたが、複数の角茄子が織り成す奇妙な立体感と絵の背景の処理からくる不思議な奥行きが気に入ったそうです。とくにこの奥行きのせいでじっと見ていると絵の世界に引き込まれていきます。はっと気づくと時間がたっています。

これがポストカードやポスターの絵で起きるかと言うと、どんなにお気に入りの絵でも起こりません。少し覚めた感じで見ることしかできないのです。本物の絵では、サイズ、筆遣い、マチエール、発色といった絵そのものの生命感が絵の世界にに誘う力となるのでしょう。私たちはある世界の入り口を買いました。


<参考>
*1:デザインフェスタ(公式HP)
*2:hrm(公式HP)
今回質問してた絵がいくつか掲載されています。井戸の絵もありますよ。
*3:ツノナス(Wiki)


<紹介>
「♪タイム・トラベルは楽しい メトロポリタン・ミュージアム
大好きな絵の中に 閉じ込められた♪」
みんなのうた「メトロポリタン美術館」より

「今ならわかる。」旦那さん談。

コメント

  1. ブログ新装開店、そしてご結婚おめでとうございます!


    そしてこの絵は・・・もしやあの方のあの時のあのお花の絵ですよね!?彼女はこういう柔らかいトーンの絵をお描きになるのですね。「フォックスフェイス」じゃなくて「角茄子」という和名がしっくりきますね・・なんて私は芸術通ではないのだけれど。デザフェスに出展されてたのですね。他の絵も見てみたくなりました!

    返信削除
  2. Kanicreamさん、こんばんは。

    そうです!「あの方のあの時のあのお花の絵」です。
    わかる人にはわかるですね。
    共有できる方がいて嬉しく思います。

    またお近くにお寄りの際はぜひ遊びにきてください。
    この絵も玄関でお待ちしております。

    返信削除
  3. お江戸のドミノです。
    何かの手違いでkabukimonさんの5月25日のコメントが投稿されないようでしたので、
    代行で投稿します。

    -----------------
    こんにちは、初めまして…ドミノさん&旦那さん&じゅんさん…
    今までも、時折以前のブログの方へお邪魔させて頂いていたのですが、コメントを書き込む勇気が出なくて…でも、今回“旦那さん”が御結婚され、それを期にブログもお引っ越しされた…と分かり、こうして思い切ってコメントを入れさせて頂いています…。
    「“旦那さん”、御結婚、おめでとうございます?」
    …私は歌舞伎の観劇とマンガを描くのが趣味でして、そこから《ドミノさんのブログに行き着いた》、と言うわけです。そうして、ドミノさんの文章を読むのも、とっても心地が良くて大好きなのです…。これからも、時折お邪魔させて頂きます…突然で、すみません…。

    返信削除
  4. kabukimon さん、こんにちは。

    コメントありがとうございます。
    そしてお祝いの言葉ありがとうございます。
    歌舞伎の観劇とマンガが好きなんて、旦那さんと趣味がぴったりですね!

    今月は旦那さんの大好きな亀治郎丈の襲名です。
    旦那さんは「亀ちゃんが猿ちゃんになるのかッ!?」
    なんて大騒ぎなんですが、
    この度は結婚初期費用が嵩みすぎて、観劇ストップ状態です。無念。

    歌舞伎の記事もぼちぼちアップしますね。
    またこのBlogを読みにきてくれるとうれしいです。

    返信削除

コメントを投稿

このブログの人気の投稿

なんで悲しそうな少年なの?

ドリー祭り~セコンド人生からの昇格?

熊野、房総、出羽三山!