自分の時間の作り方

「新婚生活って楽しいものですかあ~? すごく憧れちゃう~。」
「…はっきり言うけど、楽しいものではない。身を引き裂かれるような思いだ。」

ピアノの練習会(*1)の打ち上げで酒を飲みながらの会話です。旦那さんは自分の時間がなくなることを覚悟で結婚したのですが、それが予想外につらいと新婚2ヶ月たって私にも弱音を吐くようになりました。そして酒の席で幸せをおすそ分けしてほしいと隣に座ってこられた独身女性の横でこの苦渋の表情(苦笑)。

旦那さんは、せっかく縁あって夫のじゅんさんと一緒になったのですから、じゅんさんと一緒にご飯を食べて、一緒に床に入って、一緒に出かけて、一緒にテレビを見て、といった具合に、他愛のない日常を一緒に過ごしたいと思っています。しかし元々一人遊びが多様なため、一人でピアノの練習をして、一人で絵を描いて、一人で本を読んで、一人で美術館に行って、一人で旅行してと、一人を思いっきり満喫したいと思っています。

特にピアノの練習は、追い込み時期になると、TVを一切見ず、夕食を抜き、睡眠を削って時間を確保していたのですが、それがじゅんさんという家族が加わることで難しくなりました。じゅんさんは互いの個人の時間を取ることには理解を示してくれていますが、現時点で旦那さんはまだまだ居心地が悪いのです。そして慣れない家事で時間をとられたことが決定的となって、今回の練習会は不本意にも練習不足の状態で演奏に臨まなくてはならなくなりました。

一緒にすごすリズム

人間関係は「太く短く」と「細く長く」の2通りあると考えています。

「太く短く」は毎日のように顔を突き合わせ、相手の領域に踏み込み合って濃密な時間を過ごし、互いに離れた後に良きにつけ悪しきにつけ思い出に残る関係です。若い頃の恋人や学生時代の親友、仕事だとプロジェクトで顔をつき合わせた仲間などもこれに当たるのではないでしょうか。

「細く長く」は日常にあって、定期的に時間を共有し、深入りもせず安定したいわゆる大人の関係で在り続けるというものです。「太く短く」の関係がこちらにシフトする場合もありますし、大人になってからの友人は総じてこれなのではないでしょうか。

特に後者の「細く長く」というのは、続けるには二つポイントがあります。一点目はどれだけゆるやかに一緒に時間を共有するか。気を抜くと連絡をしなくなって関係が切れてしまいますし、踏み込みすぎるとあっと言う間に自分の期待どおりではないことを実感して付き合いそのものに嫌気が差しますから、そのさじ加減が大変難しいのです。二点目は二人の間にリズムを作れるか。例えば数ヶ月に1度、数年に一度、もしくは季節の挨拶の書面のみ、特定のイベントの時に声を掛け合う、など相手によって心地よい頻度がありますよね。これが定まることが互いの信頼の形であり、関係性が安定します。

そして夫婦というのも毎日顔を合わせますが、死ぬまで添い遂げるつもりで一緒になるわけですから、基本的にゆるやかに時間共有をする関係、「細く長く」であるべきで、課題発生時に意識的にプロジェクト化する関係、「太く短く」を臨機応変にとれる関係がよいと考えています。

そして今まさに旦那さんはじゅんさんとゆるやかに時間を共有し、日常リズムを作りつつあります。何時に起きて、何時にご飯を食べて、何時に寝るという基本的生活習慣に始まり、家事の役割分担や、一緒に楽しむ趣味やレジャーなど。まさに互いに歩み寄ってリズムを作ろうとしているときに、独身時代と全く同じ自分のペースばかりを前面に出すと、そもそも相手と信頼関係が結べません。


先輩マダムたちのリズム

ピアノ練習会の後、打ち上げの飲み会で先輩マダムたちにそんな悩みを打ち明けると、

「まじめすぎるでしょー。」
「適当にやらないとー。」
「好きで一緒になったんでしょー。もっと甘えていいよー。」

と笑われました。

先輩マダムたちの中には、旦那さんと比較的近い共働きの結婚1年目の女性、2歳の女の子のいる女性、小学生の男の子が二人いる女性がいました。共働きの方は、1年間夫と衝突をしながら、家事を平等に分担してもらうことにこぎつけ、時間を捻出することができるようになったそうです。2歳の女の子のいる女性は、子どもがお母さんに構ってほしくて電子ピアノのスイッチをすぐに切ってしまういたずらをするな中、辛抱強く練習を続けたそうです。小学生の男の子がいる女性は朝10~20分程度、そして子どもが宿題をする夜の時間に30~40分程度、毎日短くてもコツコツ時間を取るように努めたということでした。

こういう話を聞くと練習会に参加してよかったと旦那さんは心から思ったそうです。みんな時間の捻出に苦労しながらピアノを頑張っているとわかると、一人だけ弱音を吐いてはいられないですよね。

旦那さんは今回のようにろくに練習もしないで人前で演奏を晒すのは本当に苦痛で、演奏する曲を減らしてもらおうか、果ては仮病でも使って休もうか、本気で悩んでいたのですが、人はいつだって準備を尽くして自分の思い描く完璧な状態でお披露目できるわけではないですからね。言い訳をしないでその時点でのベストをつくすことでしたらできるはずですよ。演奏時間なんてほんの10分程度じゃないですか。くよくよしないで行ってらっしゃいな。じゅんさんも私もそんな風に勇気付けて、その日彼女を送り出したのでした。

これからはじゅんさんとの対話、少しの時間でも毎日やることでピアノの練習をじゅんさんとの生活のリズムに組み込むこと。私も及ばずながら旦那さんのお手伝いしていこうと思います。



<参考>
*1:ピアノの練習会とは、ピアノ教室の仲間うちで日ごろの成果を披露しあう会です。
一にも人前、二にも人前。人前で弾く緊張感の中で集中することに慣れるようにと、
発表会とは別に1年に1回は、旦那さんのピアノ教室で開催されます。


<紹介>
今回、旦那さんはラヴェルの「クープランの墓」のメヌエットに挑戦しました!

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