ドリー祭り~セコンド人生からの昇格?

バドミントンで相手が巧いといつまでもラリーがつづくように、ピアノの連弾というのは低音担当者が巧いと高音担当者はノリノリに弾くことができます。もちろん低音担当者は先生です。

以下はLOVELOG版Messier Catalogue 27の2009年01月09日の記事の再投稿です。



ドリー祭り~セコンド人生からの昇格?(2009年01月09日)


年末の26日にピアノ教室のみなさんが小品を練習して披露する会がありました。発表会というには大仰なので、その教室では練習会と呼んでいます。今回の練習会は趣旨が変わっていまして、テーマ「ザ・連弾」。連弾というのは1台のピアノに2人が並んで座って弾くスタイルのことです。このときプリモ(高音部)、セコンド(低音部)に分かれます(*1)。贅沢になると「2台のピアノのための~」という連弾曲もありますけど、今回は1台のピアノにて。

連弾において、目立つのは主旋律を弾くプリモなんですが、概ね難しいのはセコンドじゃないかと思うんです。譜面が難しいとか、表現技術が難しいというよりは、全体のノリだったりフレームをコントロールするから。ロックバンドでも、いくらリードギターが上手くても、ドラムやベースがもたつくと全体としてもうぐだぐだでしょう? そうなったら困る。だから大抵、技量がある、それ以上にプリモを乗せてあげられる度量がある人がセコンドになることが多いんじゃないかと踏んでいます。

ところがプリモ、セコンドが決まる理由はそれだけとも限らない。一つは見栄え。よく姉妹なんかで連弾をすると、お客さんに近くてよく見えるのは高音部ですので、体の小さい妹がプリモ、大きい姉がセコンドとなって、セコンドの人がプリモの影にならないように配慮されます。そしてもう一つ重要なのは音質です。やっぱり華やかな曲の場合は、キラキラした音が出せる人がプリモを担当したほうがいいわけですしね。


プリモに抜擢ッ!!


旦那さんは、小さい頃からピアノを習っていたのですが、連弾をするときはいつもセコンドでした。それは決して巧いからではありません。音が地味だからです(苦笑)。私が言うのもなんですが、粒が揃った音が出るのはいいのですが、ぎゅっとした抑制的な音なんです。ですからプリモを担当したとしても曲に鮮やかな色味がつかない。これは生来の性格や好み、表現技術など、様々な問題が絡まっていますので一朝一夕とはいかない。しかし変わりたいのであれば、意識をして一歩一歩表現力をつけていく必要があるでしょう。

若い頃は人と比べて卑下しがちですので、旦那さんも例に漏れず「セコンド人生の私。いつかプリマになれるのかなあ?」とひっそり思っていつつ、今まで生きてきたと言っています(大げさだな…)。ところがですッ! 今回の「ザ・連弾」で初でプリモ担当が先生から言い渡されたのです。演奏する曲はフランスの作曲家フォーレの「ドリー組曲」の最終6曲目の「スペインの踊り」。

「ドリー組曲」とは、フォーレがバルダック家のお嬢さん、ドリーちゃん(愛称)の誕生日祝いに書かれた曲を中心に編まれた連弾曲6曲からなります(*2)。

第1曲 子守歌(Berceuse)
第2曲 ミ・ア・ウ(mi-a-ou)
第3曲 ドリーの庭(Le jardin de Dolly)
第4曲 キティー・ワルツ(Kitty-valse)
第5曲 優しさ(Tendresse)
第6曲 スペインの踊り(Le pas espagnol)

旦那さんが組む連弾相手はと言うと…それは先生です。生徒さん全員の連弾のセコンドを先生が担当されました。生徒6人でドリー組曲全6曲、チーム☆ドリーの結成ですッ(それ以外の連弾もあり)。というわけで、先生は上手いからセコンドという理由で、自動的に旦那さんはプリモ。しかし旦那さんにとっては理由はどうでもよくて、バレエ団のプリマドンナに抜擢されたようなヨロコビ(・∀・)!


華やかな曲への伏線


旦那さんが「スペインの踊り」の練習に入るにあたり、教室でCDを聞かせてもらったり、曲の成り立ちをインターネットで調べたりして、イメージをつかみました。どんな曲か知りたいですか? こんな感じ。(YouTube1参照)

<YouTube1>
Faure,Dolly Suite, Le Pas Espagnole



ね、超高速でとっても華やかなんです。そもそも「華やかだ」という形容動詞は旦那さんの人生のどこにも付いてこないため、自分にないものをどうやって搾り出すのかと悩んだようですが、この曲のプリモは、音階(スケール)の上り下りをジェットコースターのように繰り返したり、アーティキュレーション(*3)のニュアンスでアゲアゲになるように、既に楽譜ができあがっていますので、楽譜に忠実に、そこに気分を添わせるように努めたそうです。

練習中は自分の担当の曲に集中しますので、旦那さんは組曲全体の構成は気にしていませんでした。つまりなぜ「スペインの踊り」が組曲の締めになっているかを考えなかったのです。いざ発表会で皆さんの演奏を聴いてそのことに初めて気づいた! 「ザ・連弾」という面白い趣旨の練習会は、こういった効能があったのですね。

この曲はフォーレの知人女性(愛人説あり)の子供のプレゼントに書かれたものですから、全体的に子供の無邪気で元気な感じだったり、大人が童心に帰るようなほっこりとした感じがするのですが、5曲目の「優しさ」というのが不思議な曲で、ブルーグレーのような瞑想的な雰囲気を醸しだしていました。そこで旦那さんが感じたのは大人が子供を見守る視線と子供が大人に返す視線、目線で交わす愛のようなものだったそうです。

すると、6曲目の華やかさって何だろうと考えたとき、子供を見守り続けた大人が、幼いと思っていた女の子にふっとレディーに感じた瞬間とでも申しましょうか。「あー、お姉さんになったのね~!」と感心し、将来の本当のレディーになった時を想像してパアッと華やいだ気持ちだったのかなあと。この解釈が正しいかどうかはわかりませんが、練習のときにこの感覚をつかんでいれば、旦那さんはもう少しアドヴァンストな表現ができたのではないかと私は思います。

セコンド人生から昇格するにしても、組曲であることの意味、ちゃんと考えないといけませんね。真のプリモ人生は歩めませんよ。


<参考>
*1:PRIMO、SECONDO イタリア語です。
*2:ドリー組曲(Wiki)
*3:アーティキュレーション(Wiki)


<紹介>
ピアノ連弾の「ドリー組曲」入っとります。

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