限界は自分で決めたらそこで終わり

これは去年の発表会について書かれた記事です。これで旧ブログからのピアノ関連記事の移行は終了です。ピアノ演奏関連は年に2~3回記事をアップしていますので、興味のある方は見に来てください。音楽は音を楽しむと書きますが、旦那さんにとっては身体コントロールの修行の意味合いが強いです。もっと楽しんでって思いますね。ほんと。

以下はLOVELOG版Messier Catalogue 27の2011年10月13日の記事の再投稿です。


限界は自分で決めたらそこで終わり(2011年10月13日)

いきなりスポ魂(コン)のようなタイトルではじまりましたが、我が旦那さんのスポ魂と言えば、このBlogをお読みになっている方はご存知、ピアノです。体育会系ピアノ部(*1)。大人になって再開してから7年が経とうとしています。先日、10月の体育の日の連休最終日、ピアノ発表会がありました。

アマチュアのピアノ愛好家が、発表会での演奏に費やす時間なんて、たかが5分~15分(レベルが上がると大曲に挑戦するのでもっと長くなるけれど)。旦那さんが一日の大半を過ごす会社で、鼻をほじっていたらあっという間に過ぎてしまう時間です(笑)。保険をかけながら、リスク回避しながら、ペース配分をしながら、チームの中で自分の割り当てられた仕事に精を出すサラリーマンの旦那さんにとって、このように、短い時間、たった1回きりの演奏に、出し惜しみせずに最高な状態をぶつけるのは、かなりスリリングな体験です。特殊なお仕事をされてない限りは、ほぼ旦那さんと同じような感じになるのではないでしょうか。するとピアノなんてたかが趣味、たかが遊びとは言え、最高な状態(自分全て)をぶつけるのに、いい加減な仕上げはできませんよね~。

ピアノに限らず、仕上げに対して「これでよし!」という終わりは、自分で決めなければ訪れません。ただ時間の区切りが来たから終わりでは、ちんたら時間を過ごしているのと同じです。ここで言う区切りとは仕上げ状態の目標のことです。しかしその目標も自分が想定範囲内を設定してしまうと上達はしません。分かりやすく言うと、自分が3レベルなら、2~3レベルを目指しても、ちんたら時間を過ごしているのと同じです。4~5レベルを目指さないと。

「楽しくやって何が悪いの、ちんたらやってもいいじゃない、仕上げの目標って何さ!」なんて言う意見もあると思います。今日3時間集中して練習したからと言って、次の日にすらすら弾けるようになるかというとそういうものではない。練習を積み重ねてできるようになるのは、1週間後かもしれないし、1ヶ月後かもしれないし、1年後かもしれない。もしかすると目標に定めてもそこに到達しないかもしれません。

しかし、仕上げの区切りまでの積み重ねの時間の中に「気づき」というものがあるはずです。目標達成しなくても、「気づき」が得られたならば、楽しくちんたらやっているように見えて、それはのんびり、ゆっくりとした歩みでしょう。もし得られないとすれば、練習方法が硬直化して、見つけることができなかっただけかもしれません。練習が硬直化しているというのも立派な「気づき」ですけどね。それを求めたということが、人間の有限の時間を過ごす上で、尊い行為なのです。その経験は次の仕上げの区切りを設定するのにきっと役に立つでしょう。

以上が、最初の「限界は自分で決めたらそこで終わり」という言葉につながります。偉そうなことを書いてますが、旦那さんの場合、正直なところ、発表会間近になると、巧くなっているのかよくわからない。それどころか、発表会直前の緊張で、ありえないところで音を間違えたり、間逆のイメージでまとめてしまったりと、壊れていっている気さえします。そんな発表会仕上げのラストスパートで、ピアノの先生にかけていただいた言葉だそうです。自分が表現したい音に近づけるのに、技術やイメージの確認などできることは残っています。もしかすると新しい発見もあるかもしれない。絶望しないこと。旦那さんの最後の踏ん張りを支えてくれた言葉でした。



今回弾いた曲のご紹介

この度、旦那さんが弾いた曲はドビュッシーの「前奏曲集第一巻『沈める寺』」です。ゲーム好きな人は「イース」(*2)に関係あるといえば、ピアノもちょっと身近になるかしら? 「そう、それそれ!」と昔熱烈ゲーマーだった旦那さんがすかさず口を挟んできます(笑)。そういえば、サティの「ジュ・トゥ・ヴー(あなたが欲しい)」を弾かれた女性になぜその曲を選んだのか聞くと「バイナリーランド(*3)の曲ということで、旦那さんからリクエストされました。」という回答が。ゲーマー仲間ここにもいるぞ!!

閑話閑題。ええ、コホン。「前奏曲集第一巻『沈める寺』」の説明を簡単にします。フランスのブルターニュ地方に伝わる、津波に飲まれてなくなってしまった、ケルト人の伝説の都市「イス(イース)」。それが再び海上に姿を現し、教会の鐘を鳴り響かせ、そして消えていく様子を描いている…そうです。もう四の五の言わずに聴いていただければ、どなたでも情景が浮かんでくるはず。ご紹介は物語を読んでいるような気分になるギーゼキングの演奏で。2分14秒あたりで、街の全様がドバーンと現れます。



今までの発表会の気づきのまとめ

もう何度か練習会(生徒だけの披露)や発表会(お客さんにも披露)やらを潜り抜けてますので(*4)、「次回こそは!」とその経験を仕上げに活かすことができたようです。

具体的には…

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1.仕上げを早くしすぎない
ピアノ曲の本気の仕上げをしたことがある人なら誰もが体験するゲシュタルト崩壊(?)。昔の発表会で1ヶ月前にピークをもってきてしまい、そこからさらに作り上げようとしたものの、やればやるほど崩れていったという苦い思い出があります。ここで言うピークとは、現時点の技術で再現できる最高の状態という意味です。地を這うくらいのスピードでもいいので基礎練習で技術を高めつつ、発表会当日にピークを持っていくペース配分が必要です。

実際に演奏が崩れてしまった場合どうするか。これはピアノの先生のアドバイスですが、片手ずつゆっくりと練習をするといいです。仕上げ段階になると意外と両手の脊髄反射のような状態(?)で弾いていることが多く、片手にするととたんに打鍵場所がわからなくなることがあります。そうしたところが、本番で集中力が飛んでしまったときに間違えやすいところなんですって。そこに気づけば強化することもできます。旦那さんも仕上げ最後の1週間、言われたとおり「片手で3回ずつ」を実施しました。焦らないことが重要。


2.間違えても止まらない訓練をする
練習の時は間違いを把握するためにきちんと立ち止まることは有益ですが、人に聞かせる場面ではどうでしょうか。演奏とは音の連続進行、流れを作ることです。それを音のミスによって止めてしまうほどかっこ悪いことはない! 屍(ミスした音)を越えてゆくタフさ、または言い方は汚いですが「ごまかす技術」が必要です。小心者で正直者な旦那さんは、例に漏れず、ピタっと止まってしまう。それまでの練習とは異なり、仕上げ段階ではこの図太さを身に付ける訓練をします。


3.「普段」という型を取り入れる
本番の一番の敵、それは緊張です。この緊張により集中ができなくなり、練習時よりもパフォーマンスが落ちます。旦那さん平均20~40%減。しかし緊張をしない人はいません。するといかに減の幅を最小限に食い止めるか、まだまだ演奏レベルがヒヨコちゃんだったとしても、これについて考えなければなりません。「練習と同じように弾ければいいのに…」。でしたら本番でも普段家で練習をするのと同じようにするのが有効でしょう。練習時の「普段」型を作る。例えば演奏前に必ず深呼吸するとか、椅子に座るのは右足から座るなど。そうするとすぅっと集中状態に入りやすくなります。え、ゴルフのスイング前みたいだって? だから最初に書いたじゃないですか。体育会系ピアノ部って。


4.本番は自己暗示をかける
ピアノ教室で発表会本番に強い女性がいらっしゃって、その方に秘密を聞いてみたのです。そうしたら「自己暗示をかけるんだよ!」と笑顔でおっしゃってました。自己暗示、ピアノの前で美しく礼をして椅子に座る自分。苦手な小節も難なくクリアして心でガッツポーズする自分、演奏が終わって晴れやかな笑顔でお客さんに礼をする自分、後から「よかったよー!」と声をかけられる自分なんて思い浮かべるのはどうですか? これじゃオリンピック平泳ぎのメダリスト北島康介さん談話みたいだって?(*5) だから最初に書いたじゃないですか。体育会系ピアノ部って。

本番にネガティブなことは思い浮かべるとどうなるか。不安が心をよぎるとそれだけで集中することを妨げます。なるほど、そういった面からも成功イメージで埋め尽くすのがいいというわけですね。実際のところ旦那さんのような小物だと、やはりというか、緊張が先にきて、豊かな想像をしている余裕がないんですよね(笑)。仕方なく、ここは簡単に「私はできる!」という言葉で気持ちを埋め尽くしてもらうようにアドバイスしました。私って、いいメンタルトレーナー狐!(自画自賛)

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いかがでしょうか。ピアノを弾く人なら当たり前すぎるでしょうか。でもこれがまた、旦那さんの場合は自分で「気づき」を得ないとできないのですよ。第一人者の本に書いてあったとしても、ピアノの先生にアドバイスをいただいたとしても、直後に身になるわけではありません。実践して、失敗・成功、試行錯誤を繰り返さないと身にならないのです。「気づき」とは頭で理解することではなく、体で理解することなのでしょう。そして、どのジャンルにしろ、体で理解することについて勘のいい人のことを天才と呼ぶのかもしれませんね。

最後に旦那さんの通うピアノ教室の紹介です。

Musique Mirabelle

新宿に出やすい方で、ピアノ興味のある方。トゥギャザーしましょう。打ち上げは居酒屋、ソウルフードはエイヒレです。ステキな仲間がお待ちしております。



<紹介>
*1:体育会系ピアノ部(当Blog)
*2:イース(Wiki)
イース(ファルコムHP) 濃ゆい絵に憧れたものだったが(旦那さん談)。
*3:バイナリーランド(Wiki)
バイナリーランド(ハドソンHP) あああ、めっちゃ懐かしい(旦那さん談)。


*4:練習会、発表会数々。当Blogの「修行」ラベルをクリック。
*5:注目の人 第4話 ハートを鍛えろ(B&G HP)


<紹介>
こちら巨匠ミケランジェリ。魔法のような演奏。

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