私を分娩台に連れていって!

旦那さんが出産事業(?)から無事生還しました。すでに旦那さんは母子共に健康に病院を退院して授乳地獄に突入しています。「玉のような女の子が生まれました!」とここで胸を張りたいところですが、分娩室の外で今か今かと待っていたじゅんさんが撮った写真はまるで「おむすび」!!! じゅんさんは「まじ、やっちまったよ。(オレの遺伝子のせいで女の子がこんなファニーな姿になっちまった!)」と頭をよぎったそうです。(下写真、羊水を飲んだらしくぐったり気味な赤ちゃん・すうちゃん)



旦那さんは自分の赤ちゃんを初めて見たときは「ビ、ビリケン…」と衝撃を受けたそうですが、彼女のお母様の話「あなたが生まれたときは頭が瓢箪みたいな形していて、お産後の私の第一声は『頭の形、大丈夫なんですか?』っていう先生への質問だったのよ。『しばらくしたら直りますよ~』って聞いて安心したわ。」という言葉を思い出して気にしなかったとのことでした。赤ちゃんって狭い産道を取ってくるとき、ジグソーパズルのような頭蓋骨を変形させて出て、がんばって出てくるんですものね(*1)。

私は旦那さんのお産に立ち会いましたが、狐の知識じゃなんも役に立ちやしねぇ。陣痛の合間に気分紛らわせの言葉をかけることぐらいしかできませんでした。ただ分娩と入院生活に付き添って唯一お役に立てるかなと思ったのは、出産体験者の話に耳を傾けることです。というのも深夜の合宿所(授乳室とも言う)にお母さんが二人以上揃えば、自分の出産体験を語る、語る、もう十人十色です。きっと十月十日の大事業を成し遂げて誇らしい気持ちが溢れているのでしょう。だから聞いてほしいんだと思います。

そして我が旦那さんも例外ではありません。出産直後、無性にマタニティ漫画を読み直したくなったそうです。出産体験を改めて共有したかったんですって。母親学級で初産婦は規則的な陣痛から分娩まで平均的に12~16時間かかると習ったものの、妊娠経過は順調、また健康と体力に自信があることから、自分のお産は5時間程度の安産だろうと高をくくっていました。しかし実際は2月の深夜の破水から実に26時間にわたる長いお産となりました。遅ればせながら今日は旦那さんのお産についてこのブログに書きたいと思います。




■陣痛VS赤ちゃん

2月のとある日。深夜に病院入りして破水を確認。7時の時点で自然に陣痛が始まってないことから、陣痛誘発剤を使用する旨の説明を受け、書類にサイン。レントゲンで赤ちゃんの頭の大きさと旦那さんの骨盤の大きさを確認していよいよお産の開始です。

8時半時点で子宮口3cm。誘発剤の点滴開始。30分程度でお腹に張りが出てきたものの、生理痛の鈍く重い感覚程度で痛いというほどでもなかったそうです。そんな中、分娩監視装置の波形をチェックしていた助産師さんが旦那さんのベッド側までやってきます。陣痛はあるものの赤ちゃんが寝ているようなのです。出産はお母さんと赤ちゃんの共同作業です。赤ちゃんが寝ていては始まるものも始まりません。助産師さんが旦那さんの大きなお腹を両手で挟み持ってお腹をゆさぶります。

14時時点で子宮口は6~7cm。途中で促進剤が追加されたためか、午前中は睡眠中だった赤ちゃんもエンジンがかかってきたみたいです。MAX10cmまではあと3~4cmと考えると、あと3時間程度で分娩台に上がれると旦那さんは計算。終わりが見えると人は「あともう一息」と元気が出てくるもの、痛みもそれほどは感じないため、お産って楽勝~とこの時点では思ったそうです。この後の苦しみは露ほども想像できず。

16時時点で子宮口の開きのペースが遅いと思ったのか、担当の助産師さんは仰向けで陣痛に耐えていた旦那さんに上体を起こして胡坐をかくように勧めてきました。ところがこの時点の陣痛はお昼頃とは比べ物にならないほど強まってきており、ポーズを変えるなど至難の技です。旦那さんは「あ、胡坐なんて、む、無理です!」と半べそをかきながら14時頃お産を舐めた自分を後悔。結局、仰向けよりはいいということで涅槃のポーズのように横になることにしました。

19時時点で子宮口8~9cm。ところが「分娩台まであと少し!」という希望を打ち砕く宣告が! 横向きに寝ていたせいでしょうか。赤ちゃんの回旋異常でお腹正面から見て右方向に傾いていると言うではありませんか。なんでもまっすぐに赤ちゃんが下に降りてこないと体がお産には適さないと判断して子宮口が10cmに開かない、またナナメのままだと赤ちゃんが産道をスムーズに通ることが難しいのだそう。そのため寝ている向きを変えるように助産師さんから指示が出ました。うわーん、陣痛ロスタイム。赤ちゃんしっかしりてーーー! 

21時時点で子宮口は9~9.5cm。今度は赤ちゃんが左向き。23時時点で再び右向き。旦那さんは息も絶え絶えで助産師さんに指示されるままに体の向きを変えます。この時尿意を催したものの陣痛で歩行困難。助産師さんから膀胱が圧迫して子宮口が10cmになるのを妨げているかもしれないとカテーテルによる排尿を勧められます。「そ、それだけは勘弁を!」 カテーテルは痛いと思ったらしく旦那さんは激しく拒否、しかし最終的には分娩台に上がるのが早くなるならと受け入れます(実際カテーテルは別に痛くなかったそうです)。この時点で0時。

そして深夜0時半。子宮口10cm。産婦人科医の内診。先ほどから赤ちゃんの大泉門(頭頂部の菱形のへこみ)を触って向きを確認しているようなのですが、だめ押しでエコーで向きを確認しまっすぐになったとGOサイン。しかし陣痛時間(いきむ時間)が短いと理由でさらに様子見をすることに。いつになったら分娩台に上がれるのか。旦那さんの気持ちが折れそうになっていました。


■私を分娩台に連れていって!

ところで、夫のじゅんさんは立会い出産をしたかと疑問があるでしょうが、旦那さんの陣痛の様子ですとじゅんさんはどこにもいませんよね。旦那さんは夫じゅんさんの立会いを希望しませんでした。お産行為を分担できるわけでもないのに一方的につらそうな姿を見させられるのがかわいそうだと言っていましたが、本当のところは事前に相手のことを考えている時点で、本番側に居られたら確実に気が散ると想像し、ご遠慮したいというのが本当のところだそうです。旦那さん、男っぷり(?)がいい…。

陣痛室には旦那さんの以外に夫立会いの妊婦の方がいらっしゃいました。旦那さんのベッドのカーテン越しに耳を立てると予想どおり妊婦さんは夫がいようがいまいが関係ないように声を上げています。それを聞かされるご主人はさぞ…と想像したものの、このご主人が冷静なのです。奥さんの「うぐうう、痛いよぅ~!」という絞りだすような声に「ほら深呼吸して。」と腰をさする音。夕飯を前にして強まる陣痛に「ご飯なんていらない、食べれるわけないでしょ~!」と拒否をする奥さんに「ご飯食べたほうがいいよ。体力は食事からだから。」と勧めています。

さらにこの妊婦さんのベッドには入れ替わり立ち替わり助産師さんがいらっしゃいます。さらに医師もやってきて何か施術を行っている様子が伺えます。なぜこの妊婦さんだけハーレム状態、もとい励ます人が多いんだ? せいぜい2時間に1度くらいしかやってこない助産師さんを待つ一人ぼっちの旦那さんは恨み節。じゅんさんの立会いを希望しなかったことを後悔します。

そのじゅんさんが夕方会社帰りに陣中見舞いにやってきました! まさに陣中見舞いです。陣痛室・分娩室の外で待ってくれているとは思ったものの、陣痛室に通してもらえるとは驚きでした。しかしその時、旦那さんは表現するのも難しい奇妙なポーズ、入院着をはだけた状態、すごい形相で必死で陣痛に耐えている最中でした。その姿を見られて恥ずかしいのなんのって。思わず旦那さんはキれて「(顔を)見られない!」とだけ叫んでじゅんさんを無視。古事記で夫に出産姿を見られて海に帰ってしまう豊玉姫(*2)もこんな気持ちだったのでしょうかね。結局は立ち会わなくてよかったのかもしれません(笑)。

そのうちハーレム妊婦さん(?)のベッドから「破水させてしまいましょう。」と医師の声が聞こえ、パンッと破水する音が。そしてあれよあれよと言うまに分娩台に行ってしまいました。この時20時。そして15分後、元気な赤ちゃんの泣き声が! 生まれた!! 陣痛で遠のく意識の中、旦那さんは分娩台にさえ上がれば出産はさくっと終わるのだ。

「私を分娩台に連れていって!」

心の中で大声で叫んでいたのが聞こえました。


■はたしてそれは痛いのか?

「子宮が痛いわけじゃないんだって。
 子宮が収縮することで周辺の筋肉や骨やらがきしんでるみたい。
 その感覚を痛いと表現するだけで、痛いと思わなければそれは痛みではないよね!」

旦那さんは出産直前に散歩でふらっと立ち寄った図書館で手に取った「シアーズ博士夫妻のマタニティブック」を一気に読みました。出産の体験談と言えば痛みにフォーカスされがちで恐怖を煽られるため、彼女はお産は助産師に言われるがままにしようと心に決め、積極的にその情報を仕入れていなかったのです。しかし正しく知ることでお産の痛みの恐怖に備えることができたといいます。

「で、実際の陣痛は?」
「衝動だよ。衝動。表現のしようがないから『痛み』と言うだけで。
 『うん○を出すこと(ひどい下痢)を我慢させられる感じ』と
 インターネットにあったけど、本当にそれに近い。
 とにかくすごい衝動が下腹部に集中して、
 体のエネルギーが漏れ出すのを必死に耐える感じ。
 耐えるのに『うッうッ』と唸り声が漏れて体がぶるぶる震えるんだよ。
 つらいのなんのって。」(*3)
「でも21時まで陣痛室の外で待つご家族に気丈にメールで
 実況中継し続けていたじゃないですか。耐えられる感覚だったんでしょ?」
「途中まではね。21時以降はメールが途絶えたでしょう?
 あそこから記憶が吹っ飛んでる。」

ははは。私が立ち会った甲斐がここ(Blog)にある(笑)


旦那さんは深夜1時前に無事分娩台に上がり、いきむこと1時間半で無事3000gを超える女の子を出産しました。分娩台では陣痛の波が来たタイミングで助産師さんの言うとおり力を入れる(いきむ)だけなので、陣痛に耐えることに比べればたいしたことはなく、むしろ我慢していた大(う○こ)がようやく出せるという開放感のことしか覚えていないと言います。そんなわけで、初産婦の方が心配される会陰切開も赤ちゃんが出てくるときの裂傷のひりひりとした痛みに紛れてよくわからなかったとのことでした。

翌日指の先まで走る全身の筋肉痛(分娩台のハンドルを握るため)と喉の痛み(いきむ時唸るため)で目が覚めたというのですから、まあ旦那さんの分娩も大変だったんでしょうけどね。

出産後、ハーレム妊婦さんとは授乳室で再開しました。

「あ、あの時、一緒にがんばった人!」
「Yo! 戦友!!」

ハーレム状態の秘密を聞いてみたところ、彼女の場合は3日前から陣痛促進剤を点滴されていたもののなかなか進まないため、医師のチェックが逐一入っていたそうです。それが人為的に破水させたところあっと言う間に生まれたというのですから何が起こるかわかりませんね。

退院の日、旦那さんは助産師さんに「思ったよりも大変なお産だったけどどうでした?」と声をかけられて、「次回は安産を目指してもっと工夫したいと思います。出産前から安産のための体作りをしたいですね。」と笑って答えていました(第二子を産む気マンマン)。女って強いな。


<参考>
*1:【第14回】赤ちゃんの頭の形、頭の骨の話-その1 頭の変形(ベビカムHP)
その他エピソード、ムスメがピッコロ(笑)(yahoo知恵袋)
*2:豊玉姫(コトバンク)
*3:男が学ぶ出産 陣痛・出産の痛いツイート集(AllAbout)
 痛みについての表現が参考になります。というか笑えます。すいません・・・。


<紹介>
旦那さんが出産体験を共にした本たち

帝王切開が経膣分娩以上に大変なことはこれで知りました。
全ての準備はこれでできるといっても過言ではない情報量と面白さ。


お産の進み方が具体的にイメージできたのはこれ。可愛い絵で癒されます。


出産はなにが起こるかわからないと知ったのはこれ。
満里奈さんマタニティライフを目指したくなる。


読むことが好きな人はオススメ。圧倒的ボリューム。


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