やさしさに包まれたなら


私のような下っ端の稲荷狐は神社の聖域に入れないことが多いのですが、奈良の大神神社はご神体とされる三輪山にさえ迎えいれてもらうことができた稀有な神社です。もう一度行きたいなと思っていたらお礼参りで訪れることができました。お礼参りの話は以前の記事の中で。

以下はLOVELOG版Messier Catalogue 27の2010年11月16日の記事の再投稿です。


やさしさに包まれたなら

最近はパワースポットとか言いまして、何かとご利益にあやかろうと、寺社仏閣巡りをする方も増えているとききます。「日経おとなのOFF」でも開運特集ですからね(*1)。「あの日経さんが! 最後は神頼みしかないのか…」とは旦那さんのつぶやき。

あ、言っておきますが、私、非難しているんじゃありませんよ。そもそも人間が現世利益にありつこうなんて、江戸時代なんてじゃんじゃんですよ。わんさと稲荷のお社が江戸にできたのも、そういった人の愛すべき性(さが)からで、稲荷狐の私もそのおかげで生を受けましたので、できれば人様のお役に立ちたいと思っているのですよ。

さて、私たちも流行に乗ったことになるのでしょうか。最近のパワースポット特集の中でも必ず取り上げられる一つ、奈良の三輪山に登って参りました。なぜ三輪山なのか? それは春の奈良旅行に遡ります。詳しくはブログの旅行記をご覧ください(*2)。私たちは三輪の神様に山の場所を教えていただいたお礼に、次回奈良に来たときは必ず挨拶に参りますと約束をしたのです。

そしてその時はやって来ました。今回は「秋の高尾山(@東京都)に登ろう。」と約束をしていたご友人に「高尾山じゃないけど、奈良の山に一緒に登る?」と声をかけると、フットワーク軽く「合流!」と言って参加されることに。彼女が三輪山を前にして奇妙な現象を起こすことになるのですが、それはこの後で。




■三輪山のご紹介

大神神社(*3)と書いて「おおみわじんじゃ」と読みます。大和に都があった頃、大神と言えば、この三輪の神様を指しました。通常の神社では本殿に大きな丸い鏡をご神体としてお祀りしますが、大神神社の場合は本殿を設けず、拝殿の奥にある三ツ鳥居を通して三輪山なをご神体として拝します。この三ツ鳥居は三輪鳥居とも言われ、オリジナル色の強いものです(*4)。そして境内には杉だったり、磐だったりを神の拠り代として祀ってある跡からも、このエリア全体は土着の古代宗教の香りがします。

古事記によると、出雲の神様で有名な大国主神(おおくにぬしのかみ)が、一緒に国造りに励んできた少彦名神が亡くなって、今後どうしたらよいか悩んでいた時、海からペッカーと輝きながらやってきた神様が「三輪山に祀ってくれたら協力してあげてもいいよ。」と言ったとか。日本書紀でも似たようなお話があります。その三輪山に祀られた神様は大物主大神(おおものぬしのおおかみ)。大国主神の別名義とされています(*5)。

私は難しいことはわかりませんが、なんてったって「大物」ですからね。これから一大政権が興ってゆく大和の地で、何かしら出雲一族の技術輸入(例えば稲作や酒造りや製鉄など)があったのではないかと思わせるようなエピソードかなと素人考えで思ってしまいました。この近く桜井市には出雲と呼ばれる集落もありますしね。気になる・なる~♪(*6)。このあたりは大勢の古代史ファンがホームページで語っていらっしゃいますので、そちらに譲ることにしましょう(*7)。


■境内で突然雨が!

その日は、奈良市内のホテルで「奈良は降水確率20%でしょう。」と朝のニュースを聞いたものですから、「傘いらないよね。」とご友人と示し合わせて、傘なしで三輪山に向かいました。ローカルバスのような(!)JR奈良線でのんびり向かっているときも空は晴れ。ところが三輪駅から境内に向かう最中にご友人が不穏なことを言うではありませんか。

「私、神社に行くと結構雨降るんだよね…」

まさかあ(笑)…うッ、空を見上げるとどこからきたのか、黒い雲。そして境内でポツポツと額で雨を感じ、そのご友人が手を合わせてお参りをし、社務所に向かってこられた瞬間に境内がザーッと雨。

「ほらね。」

「ほらね」ではなーい。こんな大雨では登山ができないと旦那さんはあわてていると、

「おちついて。しばらくすると止むと思うから。」

そして本当に止む。そして、私は一瞬何かを見たような…龍?蛇? 雨を降らすとサッと見えなくなってしまいました。 あの雨はご友人のお力になっている何かが「境内にお邪魔します」、もしくは「境内にお邪魔しました」の浄化をしているようにも思えるんだけれども。とにかく私と旦那さんは人知の及ばない何かを体験しました。

さて、不思議な雨が止みましたので、いよいよ三輪山登山です。


■私ですら、やさしさに包まれて

大物主の和魂(にぎみたま)が大神神社に祀られているのに対し、荒魂(あらみたま)が祀られているのがお隣の狭井神社。狭井神社に山の入り口があります。

狭井神社の社務所で登る旨を伝え、入山料に300円を納めます。山は信仰の場所ですから飲食禁止(ただし水はOK)、写真・ビデオ撮影禁止、草木を持って帰ってくるのも禁止。そういう説明を受け、荷物は一切合切100円ロッカーに預けることができます。山で迷子になった時のために、携帯電話番号も控えてもらい、入山人数管理の意味もある襷をもらい、それを首から下げて登山に出発です。手に持つのは携帯電話、水、無料レンタルの竹杖、これくらいの装備です。

通常ですとこのような神域は私は祓い除けられてしまうため、お留守番することが多いのですが(*8)、この山はとてもゆったりとした気に満ちていて、私も歓迎してもらいました。そして登りながら思ったのが、山道が行ったりきたりして、ぐるぐるしていている感じがまたなんとも、スイングするようなリズムで心地よいのです。それもそのはず、この山は、大物主の別のお姿で、白い蛇がとぐろを巻いている姿なんだそうです。私のようなものはそのお姿を直接見ることはできませんが、私たちはその背の上をふかふかと進んでいるような、そんな錯覚すらありました。

旦那さんもこのぐるぐる感は感じ取ったようで、「螺旋だ、螺旋。これ、天元突破するんじゃないの?(*9)」とアニメおたくな感想を言っていましたが、あながち嘘ではないかもしれませんね。何か大きな危機があったときに発揮される、地の底に何か眠っているような、そんな大きな溜めのパワーを山全体から感じたのも確かです。

入山して、山頂の奥津磐座でお参りをし、「またいつでもいらっしゃいね。」という暖かいお言葉をいただいて下山。所要時間2時間。帰り際に山を振り返ると、大きな大物主が体育座りされている姿がふっと心に浮かびました。いろんな意味で筑波山より優しかったと思う(苦笑)(*10)。

やさしいパワーに包まれた私たちは東京でまたがんばれそうですね。


<参考>
*1:日経おとなのOFF2010年6月号(日経BP)
*2:神様に遊ばれてしまった(当Blog)
*3:大神神社(公式HP)
*4:三ツ鳥居(Wiki)
*5:大国主神と大物主(Wiki)
*6:奈良県桜井市出雲(歴史ネコのページ)
*7:例えば…
 大神神社と大物主神、そして少彦名神(中原中也とダダイズム、京都時代HP)
*8:上賀茂神社は入れなかった…(当Blog)
*9:天元突破グレンラガン(ソニーミュージック)
 第27話 「天の光は全て星」での名言(名言のネ申)
*10:筑波山は厳しかった…(当Blog)

 

<紹介>


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