浅草橋お雛様購入戦記
2月生まれのすうちゃんは去年の節句は見送り、今回が初節句。人形の問屋街・浅草橋でお雛様を購入することにしました。予算と飾る場所の制約からくるお雛様の種類(*1)を決めて、あとはカタログである程度イメージを掴んで、現地で顔と色味の好みから決めれば楽勝!
浅草橋も見て回る順も考えました。まず表通りの大きなお店(久月、秀月、吉徳など)を先に周り、購入したいお雛様人形に目星をつけ、値下げ交渉をして相場を知る。その後裏手のお店に入り、候補を見つける。ビビビときたものが最低2つ揃えば、それから絞込む。事前に練った作戦はうまくいくように思われました。
最初におかしくなったのは大きさです。お雛様の大きさは小さいほうから、柳、芥子、三五、十番、九番、八番、七番…とあるのですが、旦那さんの間口の条件、60cmくらいですと芥子(22X15cm)くらいとなります。ところが大きいほどお顔の個性がはっきりと見てとれたり、服の見栄えがよかったりするものですから、三五(25X17cm)に惹かれていきます。すると
「間口80cmまでなら置けないわけじゃないのよね。」
と条件がぶれていきます。人形が大きくなるということは値段も高くなっていき、予算をぐんぐん超えていきます。
「ほら、今、円安でしょ。ドル建ての貯金崩せばいいし。
なんていっても一生にひとつのものだもの。奮発してもいいんじゃない?」
そこに歯止めをかけてくれたのは同伴したじゅんさんと、じゅんさんのお母様です。部屋に置くことを想像するように粘り強く旦那さんに説得を続け、予算内に収まる間口60cm程度の芥子サイズの人形を探すように目を覚まさせてくれたのでした。
旦那さんの家は小さな借家住まいから生活をスタートしたこともあって、雛人形はケース入りの木目込みの立ち雛でした。その頃の近所の女の子たちは七段飾りが主流でした。その中にあって肩身の狭い思いをしたかというと、むしろ「うちのお雛様は特別だ。モダンで(当時この言葉を知っていたかはともかく)かっこいい!」とひっそり誇りに思っていたのです。事前に候補に挙がっていたものもすうちゃんにそっくりなふっくらとしたお顔とぽっちゃり目の胴がかわいい木目込みの親王飾りでした。
ところが旦那さんはあるシチュエーションを想像しました。小学生になってよその子が遊びに来る。「すうちゃんのお雛様、デブー。」と子供らしく無邪気に言う。そんなことを言われよそのお雛様と違うことが気になったすうちゃんは「なんでこのお雛様買ったの?」と問う。事情を知らない旦那さんは「すうちゃんによく似ていたからよ。」と答える。「私デブなんだ」すうちゃんは傷つく。本当にデブならなおさら(現在その傾向あり)。うわああああ。
木目込みはモダンでかっこいい。コンパクトで住宅事情にも合っている。だがオーソドックスに衣裳着の美しい顔立ちの人形のほうがいいだろうか? この迷いを持ったまま浅草橋に行ったのです。
「お子さんには七五三の衣装を着せるでしょう?
雛人形を手に取って遊ばせるでしょう?
その時衣裳着だと着物とは何かがわかります。
木目込み人形だとそれがわからない、お子さんがかわいそうですよ!」
衣裳着人形の売り場でぐいぐい営業をしてくるお店の人に「木目込みも候補にあがっている」と言うと旦那さんの迷いを突かれたのでした。
幼い頃の誇らしい記憶を否定されたように感じた旦那さんは少し暗い気持ちなりつつ、店巡りを続けました。
あるお店で条件に合う人形に出会いました。ただしそれは木目込み人形。旦那さんは前の店での店員さんの言葉に影響されてそれほど乗り気がしません。そんな彼女の肩の上を飛び越えて声を上げたのがじゅんさんのお母様でした。なんでも調度品がシンプルで高級感があるのが気に入ったというのです。確かにそのお店は、衣裳着、木目込みかかわらず、人形以外の備品、ぼんぼり左近の桜、右近の橘、三宝など、他のお店とは少し印象が違います。旦那さんも三宝のピカピカした銀色の瓶は安っぽくて嫌だなあと思っていたところだったのです。
旦那さんは思い切って衣裳着か木目込みか悩んでいることを店員さんに伝えるとこのように言われました。
「毎年飾るのはお母様ですから。まずはお母様が気にいったものでないと。」
この言葉で迷いが飛びました。旦那さんはどんなに小さくても、衣装の仕組みがよくわからなくても自分の木目込みの人形が大好きだったのです。浅草橋お雛様購入戦記とは自分との戦いだったのですね(笑)。
お人形を買った店はまるぎん、木目込みの真多呂人形です(*2)。姫の衣装がもう少し渋い色が旦那さん好みだったものの、2月生まれのすうちゃんが持っているこれから春になる明るい感じがちょうどよいのではないかと思いました。飾るのは旦那さんですが、その思いこそが娘・すうちゃんのための人形なのでしょう。そして後から知ったことですが、旦那さんの立て雛もなんと真多呂人形だったのです。こうやって親子は繋がっていくのですね。
<参考>
*1:お雛様は次の種類があります。
人形の種類
衣裳着人形
木目込み人形
参考サイト:人形のあづま
人形の数
親王ペア・三人官女・五人囃子・右大臣/左大臣(7段)
親王ペア・三人官女・五人囃子(5段)
親王ペア・三人官女(3段)
親王ペア(1段)
人形の飾る形状
毛氈
台
ケース
収納ケース台
人形のサイズ
(小)柳、芥子、三五、十番、九番、八番、七番 (大)
参考サイト:人形のこうげつ
*2:人形のまるぎん
真多呂人形 木目込み人形の作家ものです。
<紹介>
浅草橋も見て回る順も考えました。まず表通りの大きなお店(久月、秀月、吉徳など)を先に周り、購入したいお雛様人形に目星をつけ、値下げ交渉をして相場を知る。その後裏手のお店に入り、候補を見つける。ビビビときたものが最低2つ揃えば、それから絞込む。事前に練った作戦はうまくいくように思われました。
ぶれまくる条件
ところがそうは問屋がおろさない。浅草橋は人形問屋街というのに…。あれ、寒いギャグ。問屋街、お雛様を見れば見るほど混乱してくるのですね。最初におかしくなったのは大きさです。お雛様の大きさは小さいほうから、柳、芥子、三五、十番、九番、八番、七番…とあるのですが、旦那さんの間口の条件、60cmくらいですと芥子(22X15cm)くらいとなります。ところが大きいほどお顔の個性がはっきりと見てとれたり、服の見栄えがよかったりするものですから、三五(25X17cm)に惹かれていきます。すると
「間口80cmまでなら置けないわけじゃないのよね。」
と条件がぶれていきます。人形が大きくなるということは値段も高くなっていき、予算をぐんぐん超えていきます。
「ほら、今、円安でしょ。ドル建ての貯金崩せばいいし。
なんていっても一生にひとつのものだもの。奮発してもいいんじゃない?」
そこに歯止めをかけてくれたのは同伴したじゅんさんと、じゅんさんのお母様です。部屋に置くことを想像するように粘り強く旦那さんに説得を続け、予算内に収まる間口60cm程度の芥子サイズの人形を探すように目を覚まさせてくれたのでした。
木目込み人形だとかわいそう?
ところで雛人形の種類には衣裳着人形か木目込み人形というものがあります。衣裳着とは仕立てた衣裳を胴体に着せ付けて作る雛人形、木目込みとは木製の胴体に溝を彫り、そこに布地の端を埋め込んで衣裳を着せて作る雛人形です。旦那さんの家は小さな借家住まいから生活をスタートしたこともあって、雛人形はケース入りの木目込みの立ち雛でした。その頃の近所の女の子たちは七段飾りが主流でした。その中にあって肩身の狭い思いをしたかというと、むしろ「うちのお雛様は特別だ。モダンで(当時この言葉を知っていたかはともかく)かっこいい!」とひっそり誇りに思っていたのです。事前に候補に挙がっていたものもすうちゃんにそっくりなふっくらとしたお顔とぽっちゃり目の胴がかわいい木目込みの親王飾りでした。
ところが旦那さんはあるシチュエーションを想像しました。小学生になってよその子が遊びに来る。「すうちゃんのお雛様、デブー。」と子供らしく無邪気に言う。そんなことを言われよそのお雛様と違うことが気になったすうちゃんは「なんでこのお雛様買ったの?」と問う。事情を知らない旦那さんは「すうちゃんによく似ていたからよ。」と答える。「私デブなんだ」すうちゃんは傷つく。本当にデブならなおさら(現在その傾向あり)。うわああああ。
木目込みはモダンでかっこいい。コンパクトで住宅事情にも合っている。だがオーソドックスに衣裳着の美しい顔立ちの人形のほうがいいだろうか? この迷いを持ったまま浅草橋に行ったのです。
「お子さんには七五三の衣装を着せるでしょう?
雛人形を手に取って遊ばせるでしょう?
その時衣裳着だと着物とは何かがわかります。
木目込み人形だとそれがわからない、お子さんがかわいそうですよ!」
衣裳着人形の売り場でぐいぐい営業をしてくるお店の人に「木目込みも候補にあがっている」と言うと旦那さんの迷いを突かれたのでした。
毎年飾るのはお母さん
「やっぱり衣裳着人形か…」幼い頃の誇らしい記憶を否定されたように感じた旦那さんは少し暗い気持ちなりつつ、店巡りを続けました。
あるお店で条件に合う人形に出会いました。ただしそれは木目込み人形。旦那さんは前の店での店員さんの言葉に影響されてそれほど乗り気がしません。そんな彼女の肩の上を飛び越えて声を上げたのがじゅんさんのお母様でした。なんでも調度品がシンプルで高級感があるのが気に入ったというのです。確かにそのお店は、衣裳着、木目込みかかわらず、人形以外の備品、ぼんぼり左近の桜、右近の橘、三宝など、他のお店とは少し印象が違います。旦那さんも三宝のピカピカした銀色の瓶は安っぽくて嫌だなあと思っていたところだったのです。
旦那さんは思い切って衣裳着か木目込みか悩んでいることを店員さんに伝えるとこのように言われました。
「毎年飾るのはお母様ですから。まずはお母様が気にいったものでないと。」
この言葉で迷いが飛びました。旦那さんはどんなに小さくても、衣装の仕組みがよくわからなくても自分の木目込みの人形が大好きだったのです。浅草橋お雛様購入戦記とは自分との戦いだったのですね(笑)。
お人形を買った店はまるぎん、木目込みの真多呂人形です(*2)。姫の衣装がもう少し渋い色が旦那さん好みだったものの、2月生まれのすうちゃんが持っているこれから春になる明るい感じがちょうどよいのではないかと思いました。飾るのは旦那さんですが、その思いこそが娘・すうちゃんのための人形なのでしょう。そして後から知ったことですが、旦那さんの立て雛もなんと真多呂人形だったのです。こうやって親子は繋がっていくのですね。
<参考>
*1:お雛様は次の種類があります。
人形の種類
衣裳着人形
木目込み人形
参考サイト:人形のあづま
人形の数
親王ペア・三人官女・五人囃子・右大臣/左大臣(7段)
親王ペア・三人官女・五人囃子(5段)
親王ペア・三人官女(3段)
親王ペア(1段)
人形の飾る形状
毛氈
台
ケース
収納ケース台
人形のサイズ
(小)柳、芥子、三五、十番、九番、八番、七番 (大)
参考サイト:人形のこうげつ
*2:人形のまるぎん
真多呂人形 木目込み人形の作家ものです。
<紹介>
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