「アナと雪の女王」歌の違い

「アナと雪の女王」上映がスタートしましたね。すべてのものを氷に変えてしまう呪われた能力を持って苦悩する優等生の姉エルサと思い立ったら吉日の鉄砲玉の妹アナ、姉妹の性格の違いもあるあるネタでつい共感してしまうのではないでしょうか。「妹はどこか能天気なのよね。こっちの苦労も知らないで。」「姉さんは自分だけが大変って思ってるよね。自分で背負い込むくせにさ。」など心で毒づいている世の中の姉妹が目に浮かびます(笑)。


さて、「アナと雪の女王」で注目されたミュージカルナンバー「Let It Go」 私も大好きで松たかこさんバージョンで毎日聞いておりましたところ、ある日偶然にも本家のイディナ・メンゼルさんを聞く機会があったのですね。そうしましたらずいぶん歌のニュアンスが違うことに驚きました。歌詞を書き起こしたものを転記します。


【英語版】



01 雪が山を覆う夜 足跡ひとつ残らない
02 隔絶された王国 私はその女王
03 風がうなる 心の嵐のように
04 私の苦しみを 天だけが知っている
05 秘密を悟られないで、いつも素直な娘で
06 感情を抑えて 隠さなければ
07 でも 知られてしまった 
08 これでいいの かまわない もう何も隠せない
09 これでいいの かまわない 過去に扉を閉ざすのよ
10 もう気にしない 何を言われようとも
11 嵐よ 吹き荒れるがいい
12 寒さなど平気よ 
13 遠くから眺めると すべてが砂粒のよう
14 恐れは遠く去り もう私を苦しめない
15 怯えることなく 未知へと突き進む
16 善悪やルールに 縛られずに 私は自由よ 
17 これでいいの かまわない 風と空は私のもの
18 これでいいの かまわない 二度と涙は流さない
19 自分の道を行く ここは私の王国 嵐よ 吹き荒れるがいい 
20 私のパワーが大気と 地に満ちる
21 氷の図形のように 私の魂が広がる
22 結晶となって 想いが形づくられる
23 二度と戻らない 過去は もう過ぎたこと 
24 これでいいの かまわない 新しい夜明け
25 これでいいの かまわない 理想の娘は もういない
26 私の道を行く 輝く光を受けて 嵐よ 吹き荒れるがいい
27 寒さなど平気よ


何が違うのかって、英語版は娘の私、家族や領民から期待が掛けられた王女の私(L05、25)がかなり強調されています。そして人間的な感情を露にすることで(L04-06、L13-15)、広大な自然(雪山)での一人ぼっち感が強調され今までの無力な自分が際立ちます(L13)。そして過去は雪山のごとく厳然と存在しますが(L23)、そこに背を向けて前を向いて生きることを決意します(L09)。思ったように生きると決めたときから彼女は彼女の王国の主となり(L02、19)、自然すらも支配する気概に満ちているのです(L17、20-22)。なんと力強い歌でしょう。個として生きる、すべてきちんと隔てられている、想いすらも氷の花となって固まるのですかから(L22)。



【日本語版】



01 降り始めた雪は足跡を消して
02 真っ白な世界にひとりの私
03 風が心にささやくの
04 このままじゃダメなんだと
05 とまどい傷つき
06 誰にも打ち明けずに悩んでた
07 それももうやめよう 
08 ありのままの 姿を見せるのよ
09 ありのままの 自分になるの
10 何も怖くない
11 風よ吹け
12 少しも寒くないわ 
13 悩んでたことが嘘みたいね
14 だってもう自由よ なんでもできる
15 どこまでやれるか 自分を試したいの
16 そうよ 変わるのよ私 
17 ありのままで 空へ風に乗って
18 ありのままで 飛び出してみるの
19 二度と涙は流さないわ 
20 冷たく大地を包み込み
21 高く舞い上がる 想い描いて
22 花咲く氷の結晶のように
23 輝いていたい もう決めたの 
24 これでいいの 自分を好きになって
25 これでいいの 自分信じて
26 光あびながら歩きだそう
27 少しも寒くないわ


片や日本語版。自然と対峙し支配しようとする一人の強い個人というよりも、自然の一部の私という世界観がよくわかります。自然は厳しく立ちはだかるものではなく話しかけてくれるものですし(L03)、心の中に抱えて悩んでいるのもその風のささやきで吹っ切れるのですから(L04-07)。風と空は支配するものではなく、自由に飛び出していくための象徴です(L17)。娘や王女の立場の自分、すなわち過去は語られず、「ありのままの自分になるの(L09)」、「自分を好きになって(L24)」、「自分信じて(L25)」、など自分に対する働きかけが繰り返されるのが印象的です。自分がじわーっと広がっていっていく、自分が自然へと没入していく、花咲く氷の結晶のようになりたいと(L22-23)。実に日本的ですね。

私は日本生まれですので、やっぱり日本の自然とボーダーレスな感じが好きですね。


<紹介>

コメント

このブログの人気の投稿

なんで悲しそうな少年なの?

ドリー祭り~セコンド人生からの昇格?

熊野、房総、出羽三山!